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「梅雨前線」と「線状降水帯」それぞれの違いと注意すべきポイントは?
その他 防災グッズ工房 2022.06.06

「梅雨前線」と「線状降水帯」それぞれの違いと注意すべきポイントは?

雨の季節がやってきました。命を守る情報で、防災や減災に役立てましょう!

今年も雨の季節がやってきました。例年に比べて今年の梅雨入りは全国的に早く、沖縄・奄美地方の降水量は平年より多くなると予想されています。

▲梅雨支度は早い目に…

この時季、梅雨前線が停滞することで日本列島は雨のシーズンになるのですが、長雨をもたらす「梅雨前線」とはどういったものなのでしょうか?

そもそも「前線」とは別々の気団がぶつかった境目にできます。

梅雨前線の場合は寒気団のオホーツク海気団と、暖気団の小笠原気団がぶつかりあって上昇気流が生まれ、この上昇気流が雲を発生させ、雨を降らせます。この気団がぶつかり合った境目が「梅雨前線」であり、どちらも同程度の勢力のため気団が停滞し、長期にわたって雨をもたらすのです。

また、前線に近い地域は強い雨が降りやすいので、この時季の天気予報ではお住まいの地域に梅雨前線がかかっているかどうかも注目してください。前線がかかっている場合には、いつもより厳重な雨対策をしてから出かけるようにしましょう。

梅雨末期の大雨に要注意!

オホーツク海気団と小笠原気団の勢力はいつまでも同じということはなく、7月に入る頃には徐々に小笠原気団の勢力が強まり、梅雨前線が北に押し上げられていきます。これがいわゆる「梅雨明け」です。

沖縄・奄美地方が梅雨明けすると、梅雨前線は九州や四国、本州付近に停滞するようになります。
そこで、気をつけたいのが「梅雨末期の大雨」です。

南から大量の水蒸気を含んだ暖かい空気が流れ込み、前線付近で雨雲が発達します。特に梅雨末期は気温が高くなり、空気に含まれる水蒸気量が増えることで積乱雲が発生しやすく、上空に一定方向の風が吹くと積乱雲が連続的につながり、「線状降水帯」が発生しやすい環境となるのです。

▲「平成30年7月豪雨」や「令和2年7月豪雨」で、西日本を中心に大きな被害をもたらしました。

「線状降水帯」の正式な定義はありませんが、激しい雨を降らせる積乱雲が幅20〜50km、長さ50〜200kmにわたって、数時間同じ場所にとどまる性質があるものを指します。

6月1日から運用スタート!線状降水帯の発生予測

線状降水帯が発生すると、数時間にわたって同じ場所で大雨が降り続き、豪雨災害が発生する危険性が高まります。日本で発生した集中豪雨のうち、台風によるものを除くと約3分の2が線状降水帯によるものという調査結果もあり、特に、九州地方においての発生率が高く、近年はその被害が深刻化しています。

気象庁ではこのような状況になる恐れがある場合について2022年6月1日から、線状降水帯の予測情報の提供を始めました。

スーパーコンピューター「富岳」も活用して、線状降水帯が発生する危険性がある時間帯の半日前から6時間前に、気象庁のホームページなどで見ることができます。

国土交通省「今出水期から行う防災気象情報の伝え方の改善について 」より

ただ、線状降水帯の予報は非常に難しく、的中率は4回に1回程度だということで、発表の方法は、例えば「半日後に、九州北部で発生」というように全国を11ブロックに分けて予測されます。将来的には更なる研究で精度を高めて、市町村単位での情報を提供できるよう目指しています。

気象庁では「発表された場合は、ハザードマップや避難所、避難経路の確認などを行ない、いざという時にはすぐに避難できるようにしておいてほしい」と呼びかけています。

雨や川に関する防災情報も変更!命を守る情報を

気象庁のホームページなどで大雨による災害発生の危険度の高まりを地図上で確認できる危険度分布図「キキクル」も、6月30日から一部変更になります。

これまではキキクルの危険度別の色の表示が内閣府の「大雨警戒レベル」の色と一部で異なっており、わかりづらいという意見が出ていました。

これをうけ、キキクルでは5色を大雨警戒レベルの色に合わせることとなり、土砂災害や浸水、洪水などの災害が発生している、もしくは切迫しているような危険度が最も高い警戒レベル5同等の状況は「黒」で示し、「災害切迫」というキーワードを使って表します。

国土交通省「今出水期から行う防災気象情報の伝え方の改善について 」より

災害が発生する前には必ず黒色に表示されるとは限らないことから、気象庁は「黒」になっていなくても、安全な場所に避難することが極めて重要だとしています。

それについで警戒レベル4相当の「危険」は、これまで濃い紫と薄紫で段階的に表していましたが、「紫」に統一されることになりました。気象庁は紫の段階までに、速やかに安全な場所に避難する判断をしてほしいとしています。

そのほか川の氾濫情報、高潮警報なども運用が変わります。


国土交通省「今出水期から行う防災気象情報の伝え方の改善について 」より

6月は「土砂災害防止月間」でもあります。いざというときのために日頃から備え、土砂災害による被害を防ぎましょう。